ドルフィンウォッチング

観劇や推しの活動の個人的なメモ。

2017/05/10 文劇喫茶「それから」

 まだ観る予定なのと、事情があるので(後述します)ひとまずざっくり。あとで書き直すか別記事に上げると思いますが、ネタバレが苦手な方はご注意を。

 夏目漱石原作の小説を三人芝居(+ゲスト)で演じるこの舞台。平野さんは主人公で、親から援助を受けて自由に暮らす高等遊民・代助を演じられました。
 働かず、家庭も持たず、のらりくらりと暮らしていた代助は、久しぶりに再会した親友・平岡の奥さん(三千代)をとうとう奪ってしまうのでした。しかし三千代は平岡のこしらえた借金に困って代助に援助を求めるし、平岡は平岡で借金を作った原因がどうも芸者遊びだとかでキナ臭い。結局三千代はもともと弱っていた身体をさらに悪くしてしまい、奪ったといってもその後は会えず、彼女を思うあまり縁談を断り続けた結果として実家からも愛想を尽かされて、代助は破滅していきます。
 というわけで初見の感想は「登場人物だいたいクズ」「嫂だけが救い」でした。
 ミもフタもない。

 ただ平野さんはほぼほぼ出ずっぱり、なんなら水分補給も龍角散ダイレクト(?)補給も喉スプレーも舞台上でこなすくらい2時間出ずっぱり。そして和服にシャツインの高等遊民スタイルがとても良い。脛がチラチラするのも良い。白い足袋もいい。足袋の留め金を直す仕草がすてき。
 そして冒頭、煙草を吸うシーンが最高に最高でした。ありがとうございますありがとうございます。実際に、本物のたばこに箱マッチで火を点けて煙をくゆらすのです。(肺にまでは吸ってないように見えますが。)喫煙シーンっていつ以来でしょう。「十年愛」では吸ってたかしら。セブンスターズのシンくんは吸わないよね。確実なところでは「手を振る女」以来じゃないでしょうか。デリケートな問題ではあるのですが、役柄上の様式美・表現としての喫煙はとても好きです。

 それと「奪った」と言っても実際には舞台上で激しい交合のシーンがあるわけではないのが意外でした。接吻さえせず、接触といえば手のひらをぎゅううううっと握るシーンくらい。なのですが、お手手がきれいなのでそこの表現がよかったです。その前にはちょっと手が触れただけでうろたえるような場面もあって、時代を感じさせます。三千代さんが帯をスルスルっとしたところは一応いたしているのだろうか。
 それにしてもこの時代というのがクセモノで、また後で見るからと思ってひとまず原作を読まないでいたら、借金五百円の重みがよくわからなくて参りました。どうやら1円=5000円くらいの時代らしいので、現在では約250万円ということらしいのですが。それ以外にも合計三口の借金で、それでいて下女を雇ったり、質に入れた指輪を買い戻したりしているんですよ。平岡家の、この時代の経済がわからない。

 そして今ちょっと原作をざーっと流し読みしてるんですが心臓に手を置いたり椿を愛でたりするのは原作からなんですね。てっきり舞台用の演出家と思っていました。なので舞台だけではわからなかったのですが、八重の椿は代助の心臓なのかな? 回想シーンに入る装置としても働いているみたいですけど。三千代が白百合で、慎ましい花は佐川の娘で。

 最後に代助は自分の自然な気持ちに素直になった結果これまでの報いを受ける形になったのだけれど、きっと三千代は長くないのだろうし、平岡だって借金と浪費癖で早晩詰んでしまいそうだし、現実って不条理。でもその不条理っぷりが、代助だけに向けられているようなハショり方なのがちょっと納得がいかない。舞台でも平岡は十分イヤな奴なんですが、原作だと代助の実家のことを新聞に書かずにいてやってるんだぞと言ったりお兄さんに告発の手紙を送ったり、とてもお金を借りている奴の態度ではないのですが、がっつり省略されています。時系列もごちゃっとなっているので心情が分かりにくい部分もけっこうありました。

 あとゲストの時間は私の苦手なキャストありき・ぐだぐだ前提でとても苦手な方向性でした。あれなら10分休憩にしてくれた方がありがたかったです。あとは「有毒少年」の寝ないようにする体操みたいに客席に体を動かさせるとかね。暗転がないのはいいんですけど俳優座の椅子が滑りやすいのか姿勢を保つのに苦労しました。

 というわけで、お茶を飲む感じでフラッとっていうコンセプトのわりには、ちょっと題材が重たすぎるんではないかな? と感じました。こういった実験的なシリーズの第一作目の主役に選んでいただいたことは、大変光栄であるのですが、テニミュ出の若手俳優顔ファンとしての私の好みとはズレがありました。歌って踊ってハッピー☆2.5次元以外の若手俳優の受け皿的作品も必要なんでしょうが、それに関して成功している事例はあまり聞いたことがないし今回も残念ながら……という感じです。地味な文学作品であのキャパあの日程はね。さすがにつらいです。

 いいことだけ書こうと思っていたのに結局ぐちぐちと書いてしまいました。今回急いでブログを書いた事情というのは、前の記事にも書いたんですが、これをロビーにいるスタッフに見せるとビンゴゲームのマスが1つ埋まるのです。インスタをフォローするとか、ハッシュタグつきでツイートするとか、ダイレクトな宣伝活動をマスに入れてきています。でも「60歳以上」とか「Facebookに感想を投稿」とかのえげつないマスもあり、ストレスがマッハです。観劇趣味のことをFBに書くとかないわーないわーないわないわー。(観た人にはわかる)