ドルフィンウォッチング

観劇や推しの活動の個人的なメモ。

2017/3/20 さよならソルシエ マチソワ

日程:2017年3月20日
会場:北千住 シアター1010
開演 12:00 / 17:00
終了 14:40頃 / 20:00頃(休憩10分)
出演者:良知真次平野良、反橋宗一郎、輝馬、上田堪大、Kimeru窪寺昭、合田雅吏、泉見洋平(敬称略) 他



 DVD(むしろブルーレイ)売ってください。



 再演の意味がありました。
 これが初演であったらどんなによかったことか。
 観客、共演者、いろんな方に推しを褒めてもらえる素晴らしい作品になりました。
 再再演があるのなら是非このキャストでお願いします。



 初演はどうもしっくりこなかったんです。
 歌とピアノは美しいけれど、大事な場面が省かれたりいらない場面が足されているように感じました。
 観客をひきつけるはずの歌やダンスに白けてしまうこともありました。



 ですが再演では、全体的にキャラクターが生き生きとしていて物語として一本筋が通っているように感じられました。
 大筋は変わっていません。
 ただ、感情表現が過剰と思えるくらい豊かになっていて、そのおかげでキャラクターの性格や信念が伝わりやすくなったと思います。


 千秋楽カテコで良知くんが「再演だからって前と同じにやってはいけないって演出の西田さんにダメ出しをされた。指先の動きなど細かいところが初演とは変わっている。ピアノの演奏も歌も呼吸もひとつとして同じ回はない、これは他にはない大人の2.5次元作品」というようなことを言ってました。
 これは平野さんがいつも言ってる・演じる上で大事にしていることなので、そういうところで歩み寄りがあったのかな? とも思いました。
 勝手な思い込みですが良知くんは決められたことをきっちり演じきるタイプだと思っていたので、その日の空気でニュアンス変えちゃう、ともすれば共演者を挑発するかのような平野さんの演技との相性はどうなんだろう? ってずっと思っていたのです。
 そしてそのやり方は初演では封印されていました。
 あくまでも漫画から読み取れるフィンセントだけを演じているように見え、変な話ですが新鮮味すら感じました。


 ですが今回フィンセントはふわふわなお兄ちゃんはそのままに、でも意志のある人間として演じられていました。
 テオに向けて書いた手紙の中で、神様が自分にくれたギフトは絵を描く才能じゃなくて、「君だったんじゃないかな」の場面。
 無邪気に笑いながら言う初演とは違って、今回は確信を持った言い方。
 (でもやっぱり照れて頭を掻くところがかわいい。)
 原作だと幼少期、不出来で親から疎まれがちな兄を、弟はいつも機転を利かせて助けてくれて、そんな弟が自分の絵を認めてくれたからずっと描き続けられていたっていうエピソードがあります。
 愛を知らないで育った狂気の画家の下敷きになっている部分であり、教会のシーンにも絡んでくるんですが、残念ながらこのあたりは舞台ではカットされているんですよね。
 でも再演はそれを十分に補える「君だったんじゃないかな」になっていたと思います。


 兄の絵を世に広めたい、けれどその才能を妬ましく思う弟と、その弟が好きで彼が褒めてくれたから描きつづける兄。
 題材としてはすごく考察のしがいがあると思うんですけど、これは舞台ですからすべては舞台上で表現してほしい。
 初演では物足りなかったその部分が、一歩踏み込んで演技にボリュームをつけた結果、漫画の読後感に重なった気がして不思議でした。



 そして兄弟の歌声の相性、あんなに良かったかしらってびっくりしました。
 良知テオはもともとすごく上手ですが、平野フィンの強弱のつけ方や声の伸びが格段に良くなっていました。
 頻繁にミュージカルに出ているわけではないですが観るたびに歌い方が進化していくからすごいです。
 推せる。
 全部を一生懸命歌うんじゃなくてメリハリがあるから聞いていて心地良くて、歌詞もきちんと頭に入ってくる。
 劇場がブルーシアターからシアター1010に変わったことも大いに影響していると思います。
 犬の名前のやりとりが自由なのもよかったし、兄弟で会話するときの返事が「うー」ってなるのも原作フィンセントっぽくてかわいかった。


 若手画家が筆を持って踊るのも、初演では演じる側の照れや硬さを感じて見てるこっちが居心地が悪かったのですが、再演ではどこまでの伸びやかで。
 彼らがより生き生きとしていたので、合間に現在の時制でしゃべるシーンも、煩わしさを感じないで自然な場面転換として受け入れられました。

 カフェでの掛け合いも(前回のメガネのレンズがどうのこうのって事故でしかなかったのですが)その場の雰囲気を損なわずに、より面白くなってました。
 反橋さんは初めましてだったけど、プライドが高くて真面目で若手リーダー格のアンリとして一切ブレてなくて、輝馬エミールの柔軟さとの対比がいい。


 同じキャラでも役者さんの演じ方によって全然違ってくるから舞台ってすごいし、2.5次元が嫌いな人の気持ちもよくわかります。
 自分の好きなキャラがやる気も表現力もない顔も似てない役者に演じられたらって思うとぞっとする。


 舞台がコンパクトになったおかげで暗転にかかる時間がずいぶん減った気がします。
 視線もぎゅっと中央に寄るのでプロジェクションマッピングも見逃さずにすみました。
 全員での稽古日数が短そうだったり後出し販促イベントがあったりと、気になる点もありましたが、それでも一万円の価値のある素晴らしいミュージカルを観ることができました。



 千秋楽は胸がいっぱいでカテコで誰が何をしゃべったかほとんど覚えていません。
 とくに平野さんは「大人の事情で手短に」、名前を言う前に話しはじめたアンサンブルの子に「名を名乗れ!」と絡んで良知くんに「おにいちゃんきびしいから」とフォローされるくらいだったのに、いざ自分が話し始めると相変わらずセンテンスが冗長で文末が迷子。
 愛について語っていた記憶がおぼろげにあります。
 兄弟のハケ方がめちゃめちゃかわいかったのでツイッターでレポを探すと楽しいです。
 ハグもおんぶもかわいかったけど、握手をしてくれたのが一番うれしかったな。


 心の中で固く そしていつまでも握手を。


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