ドルフィンウォッチング

観劇や推しの活動の個人的なメモ。

2017/10/26 リーディングドラマ シスター

SISTERリーディングドラマ | 東京音協

【日程】2017年10月26日
【会場】銀座 博品館劇場
【開演】19:00
【終演】20:15頃(休憩なし)
出演者:中嶋朋子平野良(敬称略)

姉弟が繰り広げる会話から、生み出されるのは絶望なのか、希望なのか-。
二人が編み出す、静かな会話劇、はじまる。


 2017年一番のお気に入りと呼べる作品に、ここに来てやっと出会えました。
 いいもの観たなーって思いました。
 いつか休日に再演してより多くの人に観ていただきたい。

 何度か上演されている作品のようですが、念のために畳んでおきます。





 姉と弟のシンプルな会話劇です。
 導入からして「死と生」を扱っていることを予感させます。掛け合いがうまいのでいやな感じはしません。
 「昨夜の食事」「遺言の書き方、隠し場所」「高校時代に舞台俳優を目指していた時の思い出話」「輪廻転生を信じるか。生まれ変わったら何になりたいか」「現在の職業」「昔書いていた詩」……。
 他愛のない日常会話のような、姉弟で話すには重すぎるような、淡々とした会話が続いていきます。

 姉と弟には、それぞれ明らかになる設定がありますが今回は触れません。文章にすると陳腐になってしまってうまく伝わらないのです。
 最終的には悲しい物語です。でも、そのさらに先はハッピーエンドだと思っています。そうであって欲しいという個人的な願望でもあります。

 ラストシーンの解釈は人によってずいぶん変わると思います。自分の見たいように見ることができる作品だと思います。
 ひとまず最後まで観ると、お二人の衣装の意味がわかります。全身黒ずくめの姉、白と黒の半分の弟。
 他にも仕掛けがありそうなのでもう一回観たい。


 どこから手をつけていいかわからなかったので、観劇直後のテンションで以下の5つにまとめてみました。


朗読劇シスターのここがすごい!




推しの朗読劇、珍しい。

lineblog.me
 終演後のブログです。「リーディングも初めて」と書かれていました。
 過去に「Kの昇天」があるような気がしますが、あれはかなりゴテゴテしてたので別扱いなのは納得。砂とか売ってたし。お誕生日イベントの朗読もお仕事とはちょっと違います。

 舞台上には椅子とテーブル。それから水差しと手に持った台本だけの舞台でした。
 お二人の椅子は前を向いた状態に置かれていて劇中は視線は交わりません。中嶋さん下手、平野さん上手でした。

 照明や音楽で多少の場面転換はあるのですが、座ったまま、身振り手振りも最小限の1時間15分。ほとんどずっと推しの声が聞けた最高の時間でした。
 ちなみに平野さん、水差しからグラスに移し変えたお水を結局一口も口にされなかったように見えました。

中嶋朋子さんがとにかくすごい。

 二人の掛け合いが始まった瞬間から、これは絶対にすごい!という確信がありました。だいぶ興奮しました。
 中嶋朋子さん、すごい女優さんでした。わたくし「北の国から」を視聴したことがない非国民なのですが、セリフの説得力がすごいですね。
 姉と弟という対比、さらに隠された設定以上に一言が深い。重い。実力差がすごい。すごすぎて語彙が消滅中。
 事前のお稽古が一回とのことで、平野さんは明確に噛んだのと甘噛みをごまかしたのが5回はあっただろうと思います。緊張もしていたのかな。
 中嶋さんはノーミス。なのに自然体。終始淀みなく揺るがない演技。サシの朗読劇ゆえの圧倒的で明確な差、いっそ清々しいくらい。
 そしてこんなにすごい人と共演できているなんて!と思ったら、それだけで楽しくって仕方がなくなってしまったのでした。
 本来の物語の楽しみ方とはズレていますが、幸せな体験でした。

マルチキャストの朗読劇なのにあて書きみたいですごい。

 観終わってからこれ、他の方はどう演じたんだろうってすごく気になりました。
 人生に悩む人ほど本を読みたがる、不安が強くて眠れない、おまけに睡眠薬オーバードーズして救急搬送──弟の脆い部分で平野さんと重なると感じた部分がたくさんありました。
 それから姉が般若心経の現代語訳を語るシーン、噛みしめるように聴きながら瞳が潤んでいたのが印象的でした。演技ではなくご本人の感動がそのまま出てきたものだと思ったんですが、どうなんでしょうね。
 こういうの、イベントなんかで聞いても望んだような答えはまず返ってきません。舞台から自分が受け取った感想が常に正解だよ、と優しく突き放されます。好き。

推しの涙が過去最高に美しい。

 最後の方で泣く場面があるですが、流した涙が最っっっっっっ高に美しかったです。優勝です。
 今まで見た中で一番美しい涙だと思いました。
 とにかく透明感がすごかった。美しすぎてゾクゾクしました。
 感情が昂ぶって声を荒げるところもスマートなのにグッとくる表現でした。いいものを観た。

ゴッホと(サティと)ゴーギャン

 これは本筋にはあまり関係なく、固有名詞が出ただけで流されてしまうのですが、ミュージカルさよならソルシエ再演ディスク化と再再演まだですか?



 自由で執着のない死者の恐れるもの、一番嫌なことって結局なんだったのかな。私は月並みだけれど「忘れられること」かなと思いました。
 人生の真理、心の在り処、違う世界にいる姉はいろんなことを知っているけどそれを弟に直接教えてはくれない。弟の妄想とも解釈できる存在だけれど、私はそうではなかったと思いたいです。


 本当にいいものを見させてもらったなと思った作品でした。
 若さを武器にキラキラ輝く舞台以外の可能性を見ることができた気がしました。
 あんまり頻繁にやるとありがたみがなくなってしまうんでしょうけど*1たまにはこういうお仕事もいいものです。

*1:一時期のハ○サム落語みたいに…