2016年9月の「インフェルノ」を振り返る。
日程:2016年9月3日~11日(全12公演)
会場:東京ドームシティ シアターGロッソ
出演者:植田圭輔、平野良、藤田玲、山内圭輔、桑野晃輔、藤原祐規、唐橋充、中村龍介、六本木康弘、新田健太、小笠原竜哉、湯浅雅恭、石上龍成、石田颯己、坂本和基、竹中凌大、中下伊織(敬称略)
DVDを観たので書きます。 ネタバレはほとんど含みません。ただひたすらに推しを褒め称えるだけです。
舞台自体は最初2回のつもりでしたが買い足して合計4回プレミアムで観て、普段あまり買わないDVDも購入いたしました。クリサマにも行ったしガチャもまわしたので貧しい私にしてはだいぶ結構な出費でございました。
でももっとたくさん観たかったな。
正確には推しの頑張りにおじぇにという対価でもって応えたかった。できなかったけど。
そのくらい平野ノエルはすごかったのです。
2016年一番頑張った大賞を差し上げたいけど、去年は他にも歌の難しい「さよならソルシエ」や汗だくで学校中を走り回る「熱闘!!飛龍小学校☆パワード」があり悩むところ。ですが努力という点においてはこの作品に一番をあげたい。
だってあんなにかっこよくて、声が素敵で、知的で、アクションができて強くて、料理が上手で、真摯に恭順を示す役を演じることができるなんて。
正直私はできないんじゃないかなって思ってました。
推しを信じることができない愚か者でした。
でも始まる前はとにかく不安しかなかったのですよ。
まず大前提として、私は主従関係が好きです。
世界にお互い以外の誰も存在しないかのようにふるまう、世界にふたりっきりの孤独な関係性が大好きです。
ですが出演が決まってからインフェルノの原作を購入して読んだとき、その関係性が萌えの琴線に触れることがありませんでした。(※個人の感想です)
登場人物が多く、謎ばかりちりばめられていて、主人公二人の関係や思惑がよく見えないまま物語は進みます。(自分の好みにこだわらなければ、高殿円先生の深い教養とRURU先生の美麗な絵柄が堪能できる、スピーディな展開の近未来サスペンス漫画なのでしょうが。)
ですからこれをどうやって舞台化するのか、まずそれが疑問でした。
それから私は平野さんは、主従においては「恭順を示される側」の方が似合うと思っていました。過去の出演作品の役柄や、若手俳優としては体格がいい方ではないという理由からです。
さらに原作者周辺がしきりに推す「スパダリ」というおたく言葉を、おたく文化に疎い平野さんがどう表現するのか。
稽古期間は短いし過酷なロケは挟まれるし直前イベントも開催されるしイベント中も弱気な発言でいっぱいだし、公式でチケット半額近くで売りだすし後出し特典もいっぱいだし、とにかくやきもきしっぱなしでした。
ですが舞台の幕が開くと、すべてが杞憂で終わったのでした。
めでたしめでたし。
舞台『インフェルノ』ゲネプロ写真&植田圭輔と平野 良コメントが到着 | PASH! PLUS
なんと言ってもノエルの一番最初のセリフです。
リッカのためにフォアグラを求めて赤城の傘下組織で暴れまわった結果、後ろ手に拘束されてしまったノエルの携帯電話が鳴る。
通話を促され、頬にあてられた電話に囁く
「ファーザ?」
その声の甘さ。
もうね、この一言で完全に舞台の成功が約束されたわけですよ。
その第一声はまちがいなくスパダリのそれ。
アニメ化されてないのにアニメの声優さんをマネたような非現実的イケメンボイス。
たしかに平野さんの声なのに、普段の発声のどこにも存在しない声音。
平野さんの声がいいという事実、そのありがたみをあらためて感じたのでした。
推しゆえにしょっちゅう声を聞いているため普段忘れがちなのですが、徹頭徹尾イケメンな役を与えられるとこうも輝くのかと。
それからこの作品の目玉であるアクション。
たとえガチョウを背負っていてもポーカーフェースを崩さないところが本当にノエル。でもよちよちあやしちゃうところがそこはかとなく平野さん。(原作にもあった気がしますが)
そしてJAEの皆様の高い技術とサポートのおかげでもって、どんな場面でも素晴らしく強く見えるのです。
たしかふしぎ遊戯(初演)に出たときは千秋楽までに5キロ痩せたと言ってましたが今回もかなり痩せたんじゃないでしょうか。しかも役作りとしての減量もされてたようなので相当苦労されたのでは。筋肉のつきにくい体質らしく鍛えても胸元も腰回りもぺらぺらなのに、フェイスラインがふっくらしがちなのですよね。
ノエルは通称「コーザのシェフ」であり、ノエルの作ったもの以外食べられないリッカのために勉学の合間をぬってレア食材を調達し、彼好みの食事を提供します。
リッカに給仕するシーンもあるのですが、そのときに短めのギャルソンエプロンをつけているのがまたかっこいいんだな。
姿勢の良さ、ワインを注ぐときラベルを上に向けボトルをきっちり半回転させて上手にしずくを切る、洗練された手つき。
会話をしながら外したエプロンを角をそろえてたたむ自然な仕草、その指先の美しさ。
こういう末端までキャラクターに染まりきって振る舞う演技が平野さんの魅力のひとつです。
そして芸能界を一度離れてその間にイタリアンだの鉄板焼きだのでお仕事していた経験が生きているようで感慨深い場面でもありました。
「気づいたらキスくらいしてるかも(笑)」とは公演前のインタビューでの発言。
ニアBL作品ゆえのリップサービスかなと思っていましたが、舞台では本当にそうなってもおかしくないくらいに二人の関係が濃密になる瞬間が確かにありました。
二人のこの先の、どう考えても困難な道のりにせめてわずかでも光があるようにと願いながら物語を見終えることができました。
ちょっと気になる点があるとすれば「父です」のくだりが日によって遊びすぎてる感じがあったことかな。キャラを逸脱しそうな言葉遊びは、ともすれば平野さんの悪い癖であるように思います。(これはオリーブやブラックサンタにも言えますけど。)
舞台自体は2時間くらいでちょうど良い長さ。
漫画よりもキャラクターを減らし、舞台としてのテーマを据えて、あらすじも変えてうまくまとめてあります。
呼吸を忘れるようなアクションや手に汗握る展開もありました。
また、経験が多く仲のいい役者さんを揃えるからこそダレる作品もあるだけに心配していたのですが、それもなく、芸達者な方々が漫画のキャラを忠実かつより濃く再現してくれていました。
ウィウィーに対して口の悪いツンデレアンクたん(強い)が嫌いな人なんて存在するんでしょうか。サーシャは原作よりドンらしさが増しているし、クラウドとスネークなんてリッカとノエル以上に熱い関係だし、スーツに白衣に銀縁眼鏡のオリーブなんて存在自体が反則だし「過ぎた……ことだよ」のアニメちっくな言い回しにぐっとこないわけがない。
あと暗転のときに右上に「インフェルノ」のロゴがアイキャッチ風に入るのがすごくかっこよくて好きでした。暗転は必要最低限にとどめてほしい派なので、うまくごまかしてくれると集中力が途切れずにすみます。
そういえば「お気に召すまま」は場面転換が自然で暗転が全然なかったな。
舞台『インフェルノ』公開ゲネプロをチラッと見せ!植田圭輔、平野良らによる近未来サスペンス・アクション
と言うわけで終わりよければすべてよし。
続編や再演があるのならなるべく早めにお願いします(推しの体力的な意味で)。
それから今年の舞台は不安なく劇場に足を運べるものばかりでありますように。